大阪・関西万博の人気エリア「関西パビリオン」。前編の福井・滋賀・京都・兵庫・奈良に続き、後編は和歌山・鳥取・徳島・三重の4県を巡ります。展示の概要と見どころ、混雑回避の歩き方に加え、歴史・文化・自然・産業・食の背景を整理。会場で得た気づきを、週末の小さな旅や次の学びへつなぐヒントをまとめました。
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出展ゾーン紹介(和歌山・鳥取・徳島・三重)
和歌山|和歌山百景 — 霊性の大地を多感覚で
展示の概要:中央ステージと、鏡面的な造形をもつ映像装置「トーテム」を核に、自然風景・神話・歴史を映し出す映像と、県産素材を活かした空間造形、そして“食”の提供が重なり合う多感覚の場が広がります。カウンターには紀州材、什器・仕上げには紀州塗り、ソファには高野口パイルなど、素材自体が和歌山の物語を伝える設えです。鏡面表現を用いた反射は参詣道の“導き”を想起させ、視線や歩みを自然に誘います。香りや触感は食や素材体験を通じて立ち上がり、映像の記憶が身体感覚へと結びついていきます。
展示の見どころ:熊野・高野に連なる“受け入れ、融和する”精神文化を、現代の来場者にも体感的にわかる形へ翻訳。空間・映像・食を同時に味わうことで、寛容の思想がもつ示唆を感じ取れる構成です。場のテンポは祈りの呼吸に呼応するように整えられ、光の移ろいと音の拍が“心身の余白”を生み出します。
体験のコツ:トーテム前は人気が高いので、開場直後や上映間隔の“谷”を狙うと快適に鑑賞できます。回遊の締めに“食”を置くと、体験全体が心地よく総括されます。鏡面越しの撮影は斜めの構図が映えやすく、人物とトーテムのスケール感をきれいに収めやすいです(※撮影可否や細かなルールは、会場案内の最新指示に従ってください)。
✅和歌山県ってこんなところ
歴史:熊野三山と高野山を軸に、修験道・熊野詣でが庶民へ広がり、道の整備と宿場文化が成熟。湯浅の醤油や紀州藩の治水・林業政策も地域を支え、参詣と物流の往来が信仰・商い・観光を結ぶ土台となりました。
文化:熊野の神楽、講の風習、語り部の口承、那智の火祭など“祈りの芸能”が生活に根づく。紀州漆器や高野口パイル等の工芸は実用品の美を体現し、旅の作法やもてなしの心とともに今へ受け継がれています。
自然:黒潮が運ぶ豊かな海、高野・熊野の深い森、那智の滝や奇岩、清冽な渓。長い参詣道は四季の気配を連ね、海霧や木洩れ日、潮騒が重なる立体的な風景に出あえるのが和歌山の大きな魅力です。
産業:南高梅・柑橘・近海マグロを柱に、湯浅醤油や備長炭、木工・観光が連携。近年は林業のDXやサステナブル観光、一次産品の高付加価値化が進み、食と体験を結ぶ地域ブランドづくりが加速しています。
食:南高梅、温州みかん、那智勝浦の生マグロ、しらす、めはり寿司やさんま寿司、湯浅醤油の香り。山海の恵みと発酵が重なる“記憶に残る旨さ”で、朝昼晩で表情が変わるペアリングも楽しめます。
鳥取|鳥取魅力名探偵! — 砂丘と星空の推理体験
展示の概要:導入展示では「まんが王国とっとり」の取り組み紹介と、3巨匠(水木しげる/谷口ジロー/青山剛昌)のキャラクター像、風紋を施した巨大な壁で来場者を迎え、メインへの期待感を高めます。メイン展示は、鳥取砂丘の砂を敷き詰めた床面の上で体験する没入空間「鳥取無限砂丘」。来場者は虫眼鏡デバイスを使って観光・グルメ・工芸の“魅力アイテム”を探索します。プロジェクション映像は夕景→満天の星→朝焼けの風紋へと移ろい、探索と没入を往復させます。
展示の見どころ:“見つける楽しさ”を核に、受動的な提示ではなく自分の操作で意味が立ち上がる参加体験に。砂丘という余白に、関心の点を打ち、線や面へ広げていく知的な遊びが展開します。星空〜朝焼けの再現はコントラストが◎。
体験のコツ:ファミリーなら「虫眼鏡→映像→虫眼鏡」の往復で子どもが飽きずに探索できます。撮影はプロジェクションが星空から朝焼けへ切り替わる瞬間が狙い目です(※撮影可否や細かなルールは、会場案内の最新指示に従ってください)。
「大阪・関西万博 鳥取県ゾーン」について | とっとリアル・パビリオン - 大阪・関西万博
✅鳥取県ってこんなところ
歴史:因幡・伯耆の城下町と港町を結ぶ山陰道・舟運が物資と文化を運び、砂丘の恵みを生かした農と交易が発達。近代には民藝運動が生活工芸を再発見し、水木しげる・谷口ジロー・青山剛昌ら漫画家ゆかりの記憶が、今日の観光文脈にも連なっています。
文化:「まんが王国とっとり」の発信力、因州和紙や焼き物、木工など民藝の技、神事・祭礼の勇壮さ。素朴で機能美に富む日用品文化が土地の風土を映し、来訪者の“使って知る”体験へ誘います。
自然:鳥取砂丘と浦富海岸のコントラスト、霊峰大山のブナ林と裾野の田園、澄んだ星空。“雄大と繊細”が近距離に同居し、季節風や光の角度で表情を変えるダイナミックな景観が旅の記憶を更新します。
産業:農林水産と観光を軸に、和牛・梨・長芋など一次産業の高度化、木材・精密加工・IT誘致が拡大。小規模でも品質重視の事業者が多く、民藝やアウトドアと連動した体験型プロダクトが成長中です。
食:二十世紀梨、松葉がに、岩がき、砂丘らっきょう、鳥取和牛、砂丘長いも、日本酒とクラフトビール。海と畑の距離が近いからこそ鮮度が光り、素朴な味つけで素材の輪郭をくっきり味わえます。
徳島|水とおどる — 清流と藍、そして阿波おどり
展示の概要:藍を基調に、阿波指物・阿波藍染・阿波和紙などの伝統工芸を空間・展示に活かした導入から、プロジェクションマッピングによる没入演出へ。祖谷のかずら橋や県内の自然・観光資源、そして阿波おどりの躍動を体感できます。会期中は特定期間の特別企画も実施。
展示の見どころ:吉野川の恵みと厳しさを受け止め、洪水の土砂を藍染料(すくも)づくりに活用してきた歴史を、「新たな価値へと変える」徳島の知恵として可視化。阿波おどりは“見る”だけでなく、(特別企画の期間には)参加・体験型のプログラムも。色(藍)とリズム(水・踊り)のレイヤーが、五感に広がります。
体験のコツ:まずは藍色基調の導入エリアで手触りや匂いを確かめ、工芸の文脈を掴んでから、プロジェクションマッピングの演出へ進むと理解が深まります。特別企画は日程が決まっているため、来場前に時間帯を確認して回遊順を逆算するのがおすすめ。鑑賞後は藍の展示に“戻って”青の余韻で体験を締めると印象が定着します。
続きは徳島県で。万博に行ったら『徳島県への招待状』をゲットしよう! | 徳島県観光情報サイト阿波ナビ
✅徳島県ってこんなところ
歴史:吉野川の氾濫原と水運を生かし、藍商が台頭。城下町と遍路道が人と物を結び、木工・製紙が育つ。洪水土砂を藍づくりに転ずる“価値転換”の知恵が、暮らしと商いの循環思想を今に伝えます。
文化:阿波おどりの躍動、藍染の深い青、和紙・木竹工芸、祖谷の架橋文化。お接待の心が接遇に息づき、旅人を内へ招き入れる。音頭とぞめきのリズムは“見るから参加へ”の境界を軽やかに越えさせます。
自然:清流・吉野川と渓谷、祖谷の険峻、鳴門の渦潮、海と山の近接が生む多彩な生態。水のテンポが速い地形ゆえ、光と影の切り替わりが鮮烈で、短い移動で表情の異なる風景に次々出あえます。
産業:藍染・染織の再価値化、林業・木工、製紙、すだち等の園芸、水産。加えてLED・光半導体など先端分野も存在。一次×工芸×テクノロジーの掛け算で、持続可能な地域産業の姿を描いています。
食:すだち、半田そうめん、阿波尾鶏、なると金時、鳴門わかめ、清流の鮎。柑橘の酸味が味を締め、だし文化と相性良好。夏は清涼、秋冬は滋味と、季節で主役が移る“青の国”らしい食卓です。
三重|日本のこころの原点 — 美し国みえへとつづく時を超えた物語
展示の概要:「出会う:時のトンネル → 知る:美し国みえ体験広場 → 旅立つ:ナビゲーション」の3幕で、三重29市町の景色や祭りを織り込んだ映像、県内5エリアの魅力を紹介する体験展示、そしてコンシェルジュ常駐のナビゲーションへ連なる構成。デジタルマップから情報を取得でき、来場後の旅計画へ自然に接続します。
展示の見どころ:伊勢神宮や熊野古道伊勢路に象徴される「日本のこころの原点」を軸に、“時を超えた物語”を映像と体験で辿ります。会期内には「熊野古道」「常若」「自然」「歴史・文化」「産業」「食」などの特集テーマ期間が設定され、テーマに応じた映像投影や期間限定展示が加わるのも見逃せません。
体験のコツ:最初に「時のトンネル」で世界観を掴み、続く体験広場で気になるエリアを深掘りしてから、ナビゲーションで具体的な行き先や情報を収集する順路がわかりやすいです。特集テーマ期間は内容が変化するため、来場前にテーマと日程を確認して回遊順を逆算すると満足度アップ。撮影はトンネルの映像切り替えが狙い目です(※撮影可否や細かなルールは、会場案内の最新指示に従ってください)。
✅三重県ってこんなところ
歴史:伊勢神宮を頂点に“常若”の思想が息づき、熊野詣や斎王の記憶、伊賀の武芸と工芸、松阪商人の商才が交差。近代には御木本幸吉の真珠養殖が世界へ開き、祈りと交易が重なる物語が続きます。
文化:伊勢の神事・御遷宮、熊野の修験、伊賀の組紐と忍びの知恵、萬古焼、海女文化、木遣りや祭礼。旅の礼法や“おかげ横丁”の賑わいに、商いと祈りが共存する三重らしい生活美が凝縮します。
自然:英虞湾のリアスと真珠筏、熊野の深山、名張・赤目の渓谷、伊勢平野の穏やかな田園。海と森、急峻と平坦が隣り合い、朝霧や潮の満ち引きが“循環”の時間を視覚化する多層の風景です。
産業:真珠・萬古焼・木工など地場に加え、自動車関連や半導体(メモリ拠点)等の先端製造、食品加工、観光が並走。伝統技と高度生産のハイブリッドが雇用とブランド力を押し上げています。
食:伊勢えび、てこね寿司、伊勢うどん、松阪牛、的矢かき、赤福。海の旨みと素朴な郷土味、贅を尽くした霜降りまで振れ幅が広い。参詣の朝餉から湾の夕餉まで、時間帯で楽しみが変わります。
まとめ
後編の4県ゾーンは、いずれも“自然—文化—産業—食”を重ねる設計で、会場体験がそのまま旅の入口になります。鑑賞のコツは、混雑帯を外した“谷”を狙うこと、そして出口のナビや物産情報を“次の行き先”に直結させること。会場で芽生えた関心を、週末の小さな旅で“現地の実感”へ更新していきましょう。
※展示内容・開催有無・提供メニュー・混雑状況は変更になる場合があります。最新情報は各県の公式サイト・公式SNSまたは万博公式サイトをご確認ください。
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