2025年にスタートした「SBIふるさと応援クラウドファンディング」。今回は島根の温泉施設のプロジェクトを紹介します。
年間14万人が利用していた島根県松江市の温泉施設「大森の湯」が、2026年4月15日にリニューアルオープンします。2020年の閉業から5年。施設の老朽化で扉を閉じたこの温泉を引き受けたのは、1963年から63年間、地域インフラを支えてきた、さんびるグループでした。ただし「元に戻す」のではありません。来待石のギャラリー、発酵食文化の体験、囲炉裏料理——地域の文化が集まる拠点として、温泉を丸ごと再設計する挑戦です。松江市が民間譲渡を公募した際、最初の応募はゼロ。補助金を3,000万円上積みしてようやく手が挙がったという経緯が、地方の温泉施設を維持する難しさを物語っています。温泉の復活が「温泉業」ではなく「地域インフラ業」の延長線上で起きた、その経緯をたどります。
14万人の"居場所"が扉を閉じた
2001年に松江市が設置した日帰り温泉施設「きまち湯治村 大森の湯」。隣接するいろり茶屋とともに、地域住民の日常に根づいていました。
利用者数の推移が、この施設の立ち位置を物語ります。2005年度のピーク時には年間約14万人が利用。山陰中央新報の報道では約14万7,600人とされ、1日あたり約400人が毎日のように顔を合わせていた計算です。ところが2019年度には約9万6,700人にまで減少していました。そして2020年11月、屋根の支柱など6ヶ所以上の腐食が見つかり、安全上の理由で休館に至っています。
松江市は施設の民間譲渡を模索しましたが、最初の公募では応募がゼロでした。補助金の上限を6,500万円から9,500万円に引き上げて再募集した結果、2団体が手を挙げ、さんびるグループが選定されました。譲渡の条件は「温浴施設としての事業を10年以上継続すること」。建物は無償で譲渡されています。
温浴施設の老朽化は全国共通の課題です。引き受け手がいなければ、施設は取り壊されるだけ。大森の湯のケースは、補助金を3,000万円増額してようやく手が挙がったという経緯を含め、地方の温泉を維持する難しさの縮図でもあります。
▶ 大森の湯リニューアル クラウドファンディング プロジェクトページ
地域を63年支えた企業が手を挙げた
この復活劇を動かしたのは、地元企業のさんびるホールディングスです。
さんびる(旧・山陰ビルサービス)は1963年の創業。ビルメンテナンスからスタートし、63年をかけて事業を広げてきました。現在はさんびるホールディングスのもとに22社のグループ企業を擁し、従業員は約1,000名です。
| 事業領域 | 内容 |
|---|---|
| ビルメンテナンス | 創業事業。オフィス・商業施設 |
| 健康スポーツ支援 | 公共施設の指定管理19施設以上 |
| 学童保育 | さんびるアカデミー |
| 介護予防 | 教室企画・運営 |
| 温浴・飲食(新設) | 株式会社大森の湯 |
なぜ温泉事業者でもないビルメンテナンス企業が、温泉の再建に手を挙げたのか。63年間にわたって地域の施設を維持管理してきたさんびるにとって、大森の湯は「顔見知りが毎日集まるサードプレイス」でした。その居場所が消えたまま5年が過ぎ、地域から日常の接点が一つ失われている——その危機感が、畑違いの事業に踏み出す動機になっています。
温泉事業のために「株式会社大森の湯」という新会社をグループ内に設立しています。プロジェクト単位の取り組みではなく法人を立ち上げている——10年以上の事業継続を前提とした構えです。
基本計画の策定には、全国で温浴施設の運営実績を持つONDOホールディングス(旧・温泉道場)が参画しています。「おふろcafé」ブランドなどで知られ、全国16施設を展開する企業です。地域への深い理解と温浴施設の経営ノウハウ——この2つが掛け合わさったところに、大森の湯の新しいコンセプトが生まれました。
山陰中央新報の取材に対し、さんびるグループは「幅広い年齢層に利用してもらえるよう経営を工夫し、引き続き地域に愛される施設にしたい」とコメントしています。
▶ 大森の湯リニューアル クラウドファンディング プロジェクトページ
「ただの温泉」には戻さない——湯治×発酵×工芸の設計思想

プロジェクトの達成度に応じて、上記写真のエリアにウッドデッキを増築し、開放感あふれる外気浴や、屋外イベントを開催したり、BBQと温泉をセットで満喫できるプランなど、多彩な構想を描いています。
地元住民や周辺の事業者ともコラボしながら、一年中いつ訪れても楽しめる、活気ある施設を作っていきます。
リニューアル後の入館料は大人平日880円、休日980円です。囲炉裏茶屋のみの利用も引き続き可能な設計になっています。
「温泉に入らなくても来られる」という設計は、この施設の性格をよく表しています。温泉+工芸+食文化+イベント。大森の湯は「お湯に浸かる場所」から「地域を知る入口」へと、役割を更新しようとしています。
| 住所 | 〒699-0405 島根県松江市宍道町上来待210-1 |
|---|---|
| アクセス | 山陰自動車道宍道ICから車で10分 / JR宍道駅からタクシーで10分 |
| 駐車場 | 50台(無料) |
| 泉質 | 単純温泉(低張性アルカリ性低温泉)、pH9.3 |
| グランドオープン | 2026年4月15日 |
クラウドファンディングという「参加のかたち」
大森の湯のリニューアルに合わせ、2026年4月1日から5月31日までの期間、クラウドファンディングに挑戦中です。集まった支援金は、館内のさらなる充実や、この場所が地域の魅力を発信する拠点となるための環境整備に活用されます。
ターゲットの構成も興味深い設計です。地元20分圏内の住民が40%、松江市内・近隣市町村が40%、県外・広域が20%。地元の人が日常的に通える場所であることを最優先にしつつ、県外の人にも島根との接点を作ろうとしています。
リターン(支援の見返り)には、温泉復活記念BOX(復活記念タオルや地元の発酵食品のセット)や、クラウドファンディング限定の年間パスポートなどが用意されています。
「行けないけど応援したい」という人にとって、クラウドファンディングは距離を超えた参加の手段です。そして「復活記念BOX」のような形で、島根の文化が手元に届く。知らない土地の温泉なのに、なぜか応援したくなる——その気持ちに応える仕組みが、ここにはあります。支援者は「遠くの常連」として、この温泉の物語に参加することになります。
大森の湯は5年の空白を経て、次の姿を選び取りました。グランドオープンは2026年4月15日です。
あなたも、この復活の物語に参加してみませんか。
クラウドファンディングで応援する方は、下記のプロジェクトページから支援の詳細をご確認ください。来待石ギャラリーや発酵食文化のコーナーが、あなたの支援で形になります。
▶ 大森の湯リニューアル クラウドファンディング プロジェクトページ
※本記事は2026年3月17日時点の情報に基づいています。料金・営業時間等の最新情報は公式サイトをご確認ください。
※クラウドファンディング内容は変更になる場合があります。
※本記事で紹介するクラウドファンディングは、CAMPFIREのプラットフォームで実施されています。
【参考・参照サイト】※最終アクセスはすべて2026年3月17日
- SBIふるさと応援クラウドファンディング - CAMPFIRE (キャンプファイヤー)
- 松江市 市長記者会見(大森の湯・いろり茶屋の民間譲渡)
- 松江市 公募型プロポーザル公告
- さんびるグループ企業概要
- さんびるホールディングス グループ企業一覧(株式会社大森の湯を含む)
- 山陰中央新報「大森の湯、さんびるに譲渡 松江市方針 26年春に運営再開へ」
- ONDOホールディングス プレスリリース「きまち湯治村 大森の湯のリニューアルを温泉道場がプロデュース」
- PR Times プレスリリース(きまち湯治村 大森の湯のリニューアル)
- しまね観光ナビ 大森の湯(泉質データ)
- しまね観光ナビ 大森の湯
- しまね観光ナビ「モニュメント・ミュージアム来待ストーン」
- 島根半島・宍道湖中海ジオパーク(来待石の石切場)
- 来待ストーン公式サイト(来待石の歴史・文化・体験情報)