岸和田だんじり祭のやりまわし VS 泉大津だんじり祭のかちあい

だんじり祭りといえば大阪府岸和田市で毎年開催されている岸和田だんじり祭が有名ですが、関西では岸和田の他にも各地でだんじり祭りが行われています。
そこで今回は、数あるだんじり祭りの中から、だんじりが猛スピードで直角のカーブを曲がる「やりまわし」が有名な岸和田だんじり祭と、停まっているだんじりに別のだんじりが後ろからぶつかっていく「かちあい」を観に毎年多くの人が訪れる泉大津のだんじり祭について調べました。

写真提供:岸和田市

だんじりのモデルは川御座船。
滑稽寸劇を行う移動式芸能舞台だった!

そもそも「だんじり(地車)」とはなんでしょう?
関東圏の人には馴染みが薄いだんじりは、神社の祭礼で用いられる屋台・山車の一種で、その原型は船です。

 地車といえば大阪の岸和田祭が有名であるが、地車が生まれたのは天神祭をはじめとした大阪の夏祭である。
 組物(くみもの)で支えられた唐破風(からはふ)の屋根を備える地車を見て、神社の社殿を連想する人は少なくない。ところが、地車の原型は船である。それもただの船ではなく、江戸時代に淀川を往来した豪華絢爛(けんらん)の川御座船(かわござぶね)が地車のモデルである。地車の周囲に巡らされた波模様の飾幕(かざりまく)や彫刻、和船用語や舵取の手法など各地の地車にも船の記憶が多く刻まれている。風に舞う吹流(ふきながし)は、まさに船の象徴である。
 今では地車の随所に花鳥風月、日本神話、軍記物などの彫刻が施されることが多いが、当初は粗末なつくりのものが多く、地車は、俄(にわか)と呼ばれる滑稽寸劇を披露するための移動式芸能舞台であった。
引用:森田玲(2021)『日本だんじり文化論--摂河泉・瀬戸内の祭で育まれた神賑の民俗誌』P6「まえがき」創元社

だんじりの形態

だんじりといえば一般的に唐破風二段の大屋根と小屋根を備える二棟造りの曳車で、4つのコマ(車輪)で大屋根を前にして曳きます(時代や地域によって、唐破風三棟造や直破風二棟造などのだんじりもあります)。至る所に『大坂夏の陣』など歴史をテーマにした美しい彫刻が施されているため、「動く歴史絵巻」「動く美術館」ともいわれ、関西地方に多く見られます。上(かみ)だんじりと下(しも)だんじりがあります。

上(かみ)だんじり

上だんじりは、泉大津市などで使われているだんじりの型です。
だんじりの周りに担い棒などの囲いがあり、土台から屋根まで通り柱で作られています。重さは2t~3tと下だんじりに比べると軽く、機動性が高いのが特徴です。

下(しも)だんじり(岸和田型)

下だんじりは、岸和田市近辺で使われているだんじりの型です。
前梃子があるのが特徴です。屋根が上げ下げできるように通り柱の縁を切り、丸柱と筒柱に分かれる構造になっています。約4tとかなり重量があり、やりまわしの際に安定感があることが利点です。

屋根の上で華麗に舞う「大工方」はだんじりの司令塔!
だんじり曳行には役割がある!

だんじりは500人~1,000人ほどで曳行します(町によって異なります)。
だんじりの屋根に乗る人、曳く人、楽器を演奏する人など細かく役割分担が決まっています。

1.鳴り物
大太鼓、小太鼓、笛、鉦を担当。通常、青年団から鳴り物係が選ばれる。

2.綱先(つなさき)・綱中(つななか)
だんじり曳行の主動力。曳き手のうち、曳き綱の先頭を綱先、中ほどを綱中と呼ぶ。綱先は曳き綱がたるまないように綱を張り、綱中は進行方向に全力で綱を曳く。

3.綱元(つなもと)
だんじりに一番近い曳き手を綱元と呼ぶ。やりまわしの時に綱中の力をだんじりに伝える重要な役割を果たす。

4.前梃子
コマの回転面と地車の間にヒノキ材の梃子を差し込みだんじりを制御する。やりまわしの時、内側の前梃子は旋回のきっかけをつくり、内側のコマの回転を抑え、だんじりを曲がりやすくする。左右二本の前梃子を操作する係は非常に危険な役のため、かなりの熟練を要する。

5.大工方(だいくがた)
だんじりの大屋根や小屋根に乗り、団扇を手に華麗に舞う。まただんじりの前方が見えない後梃子に進行方向を指示する。

6.後梃子
だんじりの舵取り梃子で長さ約3.5メートル。大工方の合図により左右にくくり付けられた綱(ドンス)を引いたり、肩で押すなどし、だんじりの向きを変える。二十人から三十人で担当する。
引用:岸和田市公式ウェブサイト「Danjiri City Kishiwada 曳行時の役割」(最終アクセス2023年8月16日)

岸和田だんじり祭のはじまり

岸和田だんじり祭は、約300年の歴史と伝統を誇るお祭りです。
元禄16年(1703年)に岸和田藩主岡部長泰(おかべながやす)公が、京都伏見稲荷を城内三の丸に勧請し、米や麦、豆、あわやひえなどの5つの穀物がたくさん取れるよう祈願して行った稲荷祭が始まりといわれています。当初の祭礼は、前に述べた通り、俄(にわか)や狂言などの芸事を演じ、その後に三の丸神社、岸城神社へ参拝したようですが、時代や社会の変化とともにお祭りの内容も変わってきています。

これを見ないと岸和田だんじり祭は始まらない!
トップスピードで街角を曲がる大迫力の「やりまわし」

岸和田だんじり祭といえば、4tもあるだんじりを曳いて勢いよく走りながら、直角に角を曲がる「やりまわし」。
お祭りの間は、だんじりは定められた曳行路を何周も駆け巡り、曲がり角ごとにやりまわしを行います。
それぞれの持ち場を受け持つ500人~1,000人の人たちが息を合わせることが重要です。町ごとの仲間意識が高く強くないとできない「やりまわし」は、岸和田だんじり祭の最大の見せ場です。

豪快なやりまわしを間近で見よう!
岸和田だんじり祭の観覧スポット「カンカン場」

岸和田だんじり祭で、だんじりが勢いよく角を曲がる豪快な「やりまわし」を大迫力で見られるスポットといえば「カンカン場」。カンカン場にはVIPビューイングシート(有料席)が設けられていて、現在予約販売中です。だんじりが猛スピードで走り抜ける様を至近距離で体感できます。カンカン場はとても混雑するので、落ち着いて安心・安全にお祭りを楽しみたい人は席をおさえておくのがおすすめです。観覧のルールも事前にチェックしておきましょう。

岸和田だんじり祭「VIPビューイングシート」概要

9月15日(金) ~  9月17日(日)の3日間は、「カンカン場」に面する山側(コープ岸和田店駐車場)と海側(カンカンベイサイドモール)の2会場に、合計約2,500席のVIPビューイングシートが設けられています。通常の観覧席をはじめ、食事付き、お土産付きなどの席も用意されています。

●日程:2023年9月15日(金)~ 9月17日(日)
●会場:岸和田だんじり祭 「カンカン場」大阪府岸和田市大北町1-3
 山側(コープ岸和田店駐車場)/海側(カンカンベイサイドモール) 
●席種 
【山側(コープ岸和田店駐車場)】
9/15(金)試験曳き 14:00 ~ 16:00 ¥2,000
9/16(土)曳出し 6:00 ~ 7:30 ¥9,000
9/16(土)午前中 9:30 ~ 12:00 ¥3,000
9/16(土)午後① 13:00 ~ 14:30 ¥5,000
9/16(土)午後② 15:30 ~ 17:00 ¥6,000
9/17(日)午後① 13:00 ~ 14:30 ¥7,000
9/17(日)午後② 15:30 ~ 17:00 ¥10,000
9/17(日)通し(弁当&土産付)13:00 ~ 17:00 ¥25,000
9/17(日)通し 13:00 ~ 17:00 ¥20,000
【海側(カンカンベイサイドモール)】
9/15(金)試験曳き 14:00 ~ 16:00 ¥1,000
9/16(土)曳出し 6:00 ~ 7:30 ¥7,000
9/16(土)午前中 9:30 ~ 12:00 ¥2,000
9/16(土)午後① 13:00 ~ 14:30 ¥4,000
9/16(土)午後② 15:30 ~ 17:00 ¥5,000
9/17(日)午後① 13:00 ~ 14:30 ¥6,000
9/17(日)午後② 15:30 ~ 17:00 ¥8,000
9/17(日)通し 13:00 ~ 17:00 ¥17,000

岸和田だんじり祭 VIPビューイングシートの予約はこちら

岸和田だんじり祭の掛け声「そーりゃ、そーりゃ」

岸和田だんじり祭の掛け声は、昔は「ちょうさや」「えやえや」だったようです。その後「ちょいとさ」「えんやさ」などと変化していき、現在は「そーりゃ、そーりゃ」となっています。

岸和田だんじり祭に食べられるごちそう

岸和田だんじり祭は別名「カニ祭り」ともいわれています。これはお祭りが行われる9月~10月頃は大阪湾で獲れるワタリガニの旬の時期だからです。
だんじり祭の期間はカニをはじめ、関東煮(かんとだき)と呼ばれるおでんやくるみ餅を家庭で用意し、来客に振る舞う習慣があります。

岸和田市制100年!
岸和田だんじり祭特別曳行決定!

今年は岸和田市制100年ということで、だんじりの特別曳行が決まっています。
特別曳行の日程は以下です。

【岸和田地区】

日時:2023年9月3日(日)12:00 ~ 14:00頃
場所:堺阪南線岸和田本町交差点から蛸地蔵駅下り交差点まで

●観覧場所
堺阪南線【浜側】にてだんじり見学が可能です。
観覧開始時間まで係員の指示に従い、待機をお願いします。観覧開始時間以降は、蛸地蔵駅下がり交差点まで一方通行でお進みください。
●待機場所
堺阪南線浜側の堺町のカーブエリアを先頭に、堺町交差点へ。
堺町交差点から、塔原線沿い和歌山側歩道を大北町交差点方向へ。

【春木地区】

日時:2023年9月3日(日)15:00頃 ~ 16:30頃
場所:ラパーク岸和田前

岸和田だんじり祭は9月と10月に分けて開催される

岸和田だんじり祭は、敬老の日の前日と前々日に行われる9月祭礼と、体育の日の前日と前々日に行われる10月祭礼に分けて開催されています。
メディアなどでよく取り上げられるのは岸和田地区・春木地区で行われる9月祭礼ですが、10月にも東岸和田地区、南掃守地区、八木地区、山直地区、山直南地区、山滝地区の6地区で行われています。だんじりは、1つの町会もしくは複数の町会の連合組織毎に1台所有していて、修理を重ねながら長いものだと100年以上、町の宝として大切に扱われ引き継がれています。

岸和田だんじり祭の日程をチェック!

9月祭礼曳行日程

●特別曳行
2023年9月3日(日)12:00 ~ 14:00頃
●試験曳き
2023年9月3日(日)14:00 ~ 16:00
2023年9月15日(金)14:00 ~ 16:00
●宵宮
2023年9月16日(土)06:00 ~ 22:00
●本宮
2023年9月17日(日)09:00 ~ 22:00

10月祭礼曳行日程

●試験曳き
2023年10月1日(日)13:00 ~ 17:00
●宵宮
2023年10月7日(土)06:00 ~ 22:00
●本宮
2023年10月8日(日)08:00 ~ 22:00

泉大津だんじり祭の「かちあい」は町同士の喧嘩が始まり?
だんじりのぶつかり合いが見られるのは全国でここだけ!

泉大津だんじり祭は、毎年10月に大阪府泉大津市内3地区(濱八町・穴師・曽根 助松)にて開催されるお祭りです。 
泉大津だんじり祭のイチバンの見せ場は「かちあい」です。
かちあいとは、ビリヤードのようにだんじりを後ろから走らせ、前に静止しているだんじりに追突させる技で、南海本線泉大津駅から海側の「濱八町(はまはっちょう)」と呼ばれる地域のみで見られます。町同士の喧嘩が原型とされていて、喧嘩の度にだんじりをぶつけ合ったことが、かちあいの始まりといわれています。同じ泉大津市内でも、駅より山側の祭では行われていないので、かちあいを見るなら海側で観覧しましょう。

泉大津だんじり祭の日程をチェック!

泉大津だんじり祭の2023年の日程は2023年8月16日時点では公表されていませんが、例年10月中旬に開催されています。
公式の情報が出ましたら、更新します。

岸和田のだんじりは泉大津から買った?
城門を潜れずコンパクトに改良!

前述のとおり、岸和田だんじり祭では下だんじりが使われています。
天明5年(1785年)、岸和田城下の北町が宇田大津村(現在の泉大津市)から大型だんじりを購入しましたが、城門を潜ることができなかったため、翌年、柱に細工を施しただんじりが岸和田で造られました。これが岸和田型だんじり(下だんじり)へと発展していったといわれています。
そういった点では、泉大津のだんじりも歴史はかなり古いですね。

岸和田だんじり祭に泉大津だんじり祭。大阪でしか体験できない熱気溢れる「だんじり祭り」に出かけませんか。

【参考サイト・参考書】

岸和田市公式ウェブサイト「Danjiri City Kishiwada」(最終アクセス2023年8月17日)

NECネクサソリューションズ「岸和田とだんじり祭」(最終アクセス2023年8月17日)

泉大津若頭連合連絡協議会「泉大津だんじり祭」(最終アクセス2023年8月17日)

森田玲(2021)『日本だんじり文化論--摂河泉・瀬戸内の祭で育まれた神賑の民俗誌』創元社

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