【2026年】大井川鐵道の全線復旧はいつ?茶農家が教える川根茶の淹れ方と絶品和菓子ガイド

「ブゥゥゥーン……」

4月の早朝、筆者である私の実家では目覚まし時計よりも先に、茶畑の防霜ぼうそうファンが回る低い音で目が覚めます。直径1メートルもあるファンは空気を撹拌かくはんし、新芽に霜がつくのを防ぎます。やがて気温が上がり、ファンの音が役目を終えるゴールデンウィークの頃。窓を開けると、目の前に広がる茶畑は朝の光を透かし、まるで新芽そのものが内側から発光しているかのような、凄みのある黄緑色に染まっています。

私は静岡県・川根かわねの茶農家の三代目として生まれました。

世界初のペットボトル緑茶が誕生したのは、1990年のこと。これからお話しするのは、それよりもずっと前、今から40年以上前の鮮明な記憶です。

朝霧に包まれる茶畑と防霜ファン
早朝、朝霧に包まれる茶畑と防霜ファン。この静寂と機械音が役目を終える頃、川根の春が極まります

大井川鐵道おおいがわてつどう:衝撃の通学列車

静岡県の大井川鐵道おおいがわてつどうといえば「SLの聖地」ですが、40年以上前の私にとっての生活の足は、さらに古い普通電車でした。

1980年代前半、当時の主力は、元名鉄3800系や元西武312系といった、昭和20〜30年代製造の車両たち。車内に入ると、ニス塗りの「木の床」から、古い油と木が混ざったような独特の匂いがしました。

そして発車時。床下から「ドカン!」と巨大な物理スイッチが入る音がしたかと思うと、体が後ろに持っていかれるような凄まじい衝撃が走ります。

同じ車両に乗り合わせた観光客はびっくりしますが、この衝撃に、ノーリアクションで会話を続けてこそ地元民です。大和田おわだ駅周辺で窓を開ければ、「新緑のトンネル」から草木の匂いが車内になだれ込んでくる。あの古い木の床の振動と匂いは、今の電車では絶対に味わえない、私の身体に刻まれた記憶です。

SLの復活と地域への想い

あの大井川鐵道は今、令和4年9月に発生した台風15号による災害で一部区間の運休という大きな困難に直面しています。しかし、鉄路の歩みは決して止まってはいません。

かつて、大井川を走るSLのボディは「黒」と決まっていました。それが2014年に青いトーマスが走り出し、この春には新たに緑色の「きかんしゃパーシー号」がデビューしました。時代の変化とともに、その姿も彩りを変えています。

けれど、筆者にとっては「何色でもいい、煙を吐いて走って」という想いに変わりはありません。

茶摘みの最中、ふと山に響き渡る力強い汽笛。空へ昇っていく煙。それは単なる観光の光景ではなく、この町に響く「ふるさとは、まだまだ大丈夫だ」という、確かな鼓動こどうを感じさせるものだからです。

現在、大井川鐵道と県や沿線自治体が手を取り合い、「2029年春の全線復旧」という大きな目標に向けて、一歩ずつ歩みを進めています。

あの力強い汽笛が再び全線に響き渡る、誇らしいふるさとの風景を取り戻すために。大井川鐵道おおいがわてつどうの歩みを一緒に見守ってください。川根本町かわねほんちょうへのふるさと納税という形で、復活の日を共に待つ「未来の乗車券」を手にしてはいかがでしょうか。

川根の粉末茶 Chabacco 川根本町5個セット

生産者が教える「川根茶」の淹れ方

復活を願って「待つ」という時間は、実は川根の日常そのものです。汽笛を待ち、新芽の成長を待ち、そして——急須でお湯が冷めるのを待つ。あの景色を身体の中へと取り込むことが、川根の茶文化の本質です。

現代のペットボトル緑茶は素晴らしい進化を遂げています。喉の渇きを潤し、手軽に持ち運べる冷たいお茶は、私たちの生活になくてはならないものです。

しかし、お茶には「熱いお湯でなければ引き出せない味」があります。茶葉が持つ本来ポテンシャル、しっかりとした「渋み(カテキン)」という骨格です。茶農家が教える、新茶の楽しみ方はこうです。

70度のお湯で「針」が開くのを待つ

  1. 沸騰したお湯を湯呑みに注ぎ、手で持てるくらい(約70度)まで冷まします。
  2. 急須に茶葉を入れます。この時、急須の底に当たって「キンキン」という金属音が鳴るはず。硬くられた上質な茶葉である証拠です。
  3. 冷ましたお湯を注ぎ、1分。茶葉がゆっくりと開き、香りが立つのを静かに待ちます。

出来上がったばかりの新茶の茶葉は、本当に針のようにピンと尖っています。急須に落ちる硬質な音を聞きながら、その「固い針」がお湯の中でほどけていく数分間。これこそが、現代人が失ってしまった贅沢な時間なのだと思います。

家山いえやま田野口たのくちの絶品和菓子

本来の緑茶を手に入れたら、奇をてらったペアリングは不要です。私が推したいのは、地元で愛される和菓子。現在、寸断された電車の終点となっている家山いえやま駅。そこから歩いてすぐの場所にある加藤菓子舗かとうかしほの「川根大福」です。常温では持っていられないほどの柔らかなお餅の中には甘さ控えめのこし餡、さらにその中に生クリームが入っています。

注文は、今どきのECサイトではなく「電話かFAX」。わざわざ受話器を取り、店主さんの温かな声に触れて届くのを待つ。発送は代金引換で、東京であれば翌日には到着しますが、賞味期限はなんと「到着の翌日」。この潔いほどの鮮度こそ、本物の証です。
※冷凍の発送にも対応しており、賞味期限は到着から2週間です。

そしてもうひとつ、家山駅から先、運行が途絶えた「静寂の区間」にも、私がどうしても忘れてほしくない店があります。下泉しもいずみ駅から田野口たのくち駅の間にある、光林堂こうりんどうです。

ここの茶羊羹ちゃようかんこそ、私が人生で一番好きな味。こちらも電話での取り寄せが必須となっています。さらに最寄り駅へ向かう列車は走っていません。観光客の流れが止まった区間で、今も静かに伝統の味を守り続けています。大井川鐵道おおいがわてつどうが全線復旧したとき、真っ先にあの暖簾のれんをくぐってほしい――そんな「幻の味」が、今も鉄路の先で帰りを待っています。

静岡県島田市・加藤菓子舗の川根大福と急須で淹れたての温かい川根茶
光林堂の茶羊羹。熱い川根茶との組み合わせこそが、至福のひとときです

喉越しの良い冷たいペットボトル茶では、この完璧な調和は絶対に味わえないと思います。

伝統をつなぐ同級生、「諸田製茶もろたせいちゃ」の挑戦

この風景と味を守っているのが、筆者の同級生が一家で営む「諸田製茶もろたせいちゃ」。とても現実的で、しなやかな挑戦を続けている茶農家です。

実を言うと、諸田製茶もろたせいちゃは平成17年という早い段階で「川根の茶」のペットボトル飲料の開発・販売を始めています。急須を持たない家庭が増える中、「まずは手軽に本格的な味に触れてほしい」という想いから生まれた、川根茶の"最強のアンバサダー"です。

ペットボトルの便利さを誰よりも理解し、普及に努めている人たち。しかしだからこそ、山の傾斜地にある茶畑を守り、昔ながらの手技で「急須の底でキンキンと鳴る、針のようなお茶」を作り続けることにも、決して妥協しません。

彼女たちのインスタグラム(@morotaseicha)を覗いてみてください。急勾配の茶畑、立ち込める朝霧、そしてその間を縫うように走る大井川鐵道おおいがわてつどう。そこには、ペットボトルという「入り口」から入った現代人に、いつか辿り着いてほしい、息を呑むような川根の日常が発信されています。

手間暇をかけて仕上げられた本物の川根の新茶を、ぜひ公式サイトから直接取り寄せてみてください。

鵜山うやまの七曲りを眺めて

川根本町かわねほんちょうには「鵜山うやまの七曲り」と呼ばれる、大井川が大きく蛇行だこうする絶景ポイントがあります。

効率を求めれば、川も線路も真っ直ぐな方が良いに決まっています。しかし、大きく曲がりくねり、時に立ち止まりながら進む大井川鐵道おおいがわてつどうと、急須でお湯が冷めるのを待つ時間は、どこか似ています。

GWの喧騒が落ち着き、いよいよ今年の本物の新茶が本格的に出回り始める今。効率だけではない、不器用で豊かな「日本の時間」を、一杯の熱いお茶とともにぜひ取り戻してみてください。

よくある質問(FAQ)

東京方面から大井川鐵道(川根周辺)へのアクセス方法を教えてください。
東海道新幹線を利用し、「静岡駅」または「掛川駅」でJR東海道本線に乗り換えて「金谷(かなや)駅」へ向かうルートが王道です。東京駅から金谷駅までは約2時間〜2時間半。金谷駅で大井川鐵道に乗り換えます。週末の1泊旅行や日帰りでも十分に訪れることができる距離感です。
紹介されている和菓子店の住所や連絡先を教えてください。
以下の通りです。なお、営業時間や定休日は季節や状況により変動する場合があります。遠方からお出かけの際やご注文時は、事前に必ず各店舗へお電話にて直接ご確認ください
  • 加藤菓子舗(川根大福): 静岡県島田市川根町身成3530-5(TEL: 0547-53-2176)/ 8:00〜17:00(月曜・第1火曜定休)
  • 光林堂(茶羊羹): 静岡県榛原郡川根本町上長尾412-1(TEL: 0547-56-0064)/ 7:00〜19:00(不定休)
「川根大福」をお取り寄せする際の注意点はありますか?
電話またはFAXでの注文となります。配送は「代金引換」が基本です。また、保存料を使用していないため、消費期限が「発送日の翌々日(到着の翌日)」と非常に短いのが特徴です。確実に受け取れる日時をお店の方とご相談の上、ご注文ください。
鉄道が不通の区間にある「光林堂」へはどう行けばいいですか?
現在、大井川鐵道では家山駅から千頭駅までの不通区間において「代行バス」を運行しています。光林堂のある田野口駅付近へもバスでアクセス可能です。本数に限りがあるため、事前に大井川鐵道公式サイトの時刻表をご確認ください。こうした「あえて手間をかけて訪ねる」こと自体が、今、地域への大きな応援になります。
自宅に急須がないのですが、川根茶を楽しめますか?
もちろんです。最近は諸田製茶さんでも手軽なティーバッグタイプが用意されています。ただ、もし可能であれば、この記事をきっかけに小さな急須をひとつ手に入れてみてください。お湯を冷ます1分間、スマホを置いて湯気を見つめる時間は、多忙な現代人にとって最高のリセット(マインドフルネス)になります。
遠方から大井川鐵道や地域の茶農家を応援するには?
「川根本町へのふるさと納税」が最も直接的な支援になります。返礼品に大井川鐵道の応援グッズや川根茶を選ぶことで、2029年の全線復旧へ向けた力強い後押しとなります。また、本記事で紹介した「電話注文」でお菓子を取り寄せることも、地域経済を回す大切な一歩です。

※記載の情報は2026年5月時点のものです。大井川鐵道の運行状況や新茶の販売時期は、最新の情報を公式サイト等でご確認ください。

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